2015年6月20日放送 『新井英一の世界vol.318』

いきなり何だと思われるでしょうが、人生って、コロコロ転がっていくものなんですね。自分の周囲をゆっくり見渡すと、しみじみそう感じます。今から6年前、市民が作るこのコミュニティ放送局、通称『ラジオカフェ』で、私も番組を持つことを決心しました。きっかけは“閃き”だったと申し上げておきましょう。私に出来るだろうかなんて考えてたら出来るわけありません、やるんだという乱暴さだけで、全く経験のない素人がいきなり番組を始めた…こういう時、人はどういう精神状態でいるんでしょうか。私の場合は、自分の身体が、まっぷたつに分裂し、皮一枚でようやくつながっているような…もしくは割れた空気の中で暮らしてるような、常に落ち着かない居心地の悪さが、1,2年ほど付きまとっていました。

 そんな折、よく言われたのは、「継続は力なり。続けなさい、きっとあなたの実になるよ」「ラジオの経験は、いつか必ず、あなたの人生を豊かにするだろう」。…でも、次から次、立ちふさがる困難の壁に往生していた当時の私にとって、それらの言葉はあくまで他人に向けられたもののような、自分とは一切関係ない、無機質な響きを残すだけでした。

 なんだか過ぎ去った昔のように話していますが、今だって相変わらず壁ばかりで、何にも変わってなんかいません。ただ時々、歩を休めて、自分の周囲を見渡す余裕が持てるようになりました。他人と時間を共有するということは、お互いの人生の一部を重ね合わせることです。年齢も職業も生活スタイルも全く違う者同士、本来なら出会うことさえなかったかもしれないのに、縁あって、こうしてグラスを傾けている…。悩みを打ち明ける日もあれば、本気で議論の日もある、時には夢を語り合う、ラジオを通して知り合った人達は、友達と呼ぶよりは、仲間と呼ぶのがふさわしい、見えない太い糸で結ばれているような気がします。私に孤独を教え込んだはずのラジオが、気がつけば、分かち合うことを私に教えているんです。決して明るく楽しい作業ではないけれど、最後までやり遂げる価値は十分にありそう、ラジオの良さ、少しずつわかってきた今日この頃です。

 では、音楽に参ります。本日の選曲は、ここひと月ばかり、私の中でずっと流れていた曲です。なぜそうなったのか、ホントは私の最近の心境などをお話する予定でしたが、いざとなると、別の話が頭を占領し、それまでの気持ちをかき消してしまいました。お喋りと唄がそれこそ分裂していますが(笑)、どちらも今の私の心境です、変更せずそのまま参りますネ。それでは今週の曲、唄・新井英一、『生きものたちの唄』、続いて、『百鬼夜行』をお聴き下さい。

今週の曲紹介
『生きものたちの唄』
百鬼夜行』 (アルバム「アルカンタラの月」より)

放送時間17分

『新井英一の世界vol.318』の再放送は、6月22日(月)午後3時〜、6月23日(火)夕方6時30分〜です。