2015年4月18日放送 『新井英一の世界vol.309』・・・金沢より


今から2週間前の4月5日は、朝からシトシト雨でした。お昼前、小さなボストンバッグを手に、私は京都駅に向かいました。電車でも良かったのですが、急ぐ理由もないし、こんな天気にはバスが似合います、金沢まで5時間の旅を選びました。読書に疲れたら、窓の景色を眺め、時折り激しく降る雨の粒を目で追う…何の意味もなさない行為を好きなだけ楽しみました。途中、不思議な色の海を見ました。土砂の色をした海とグリーンオパールに染まった海です。これら、ふたつの海ではなく、ひとつの海が2色に分かれていたのです。バスは間もなく金沢に入りました。

ライブが開催されたのは、繁華街・片町の、「犀せい」というカフェバーです。普段は落ち着いた大人のバーだと思うのですが、なんせすごい混雑で、動くことさえままならない状況でした。

この夜は、新井英一ライブには非常に珍しく、トークショーが設けられていました。主にお話をされたのは、先ほどの『ラ・ノワイエ』の訳詞を手掛けた永瀧達治さんです。新井英一のプロデューサーであり、親友と紹介されました。永瀧さんと言えば、音楽における、フランスと日本のかけ橋的存在であり、本を出すほどの、大のゲンスブールファンでも知られています。当時シャンソンとはほとんど縁のなかった新井英一が、現在のようにレパートリーを拡大するきっかけを作った人でもあります。話は、二人の出会いに始まり、パリでのレコーディングのエピソードまで、笑いをまじえて生き生きと語ってくれました。

 では後半の曲に参りますが、ちょっと面白いことを聞いたので、先にお裾分けします(笑)。歌に入る前、新井英一が言いました、「もういいや、バラしてしまおう、実は…」。実は、ゲンスブールの歌う「L’eau à la bouche」、出だしのフレーズ、「僕のお願いきいて」と言っている「Ecoute ma voix , écoute ma prière」最初の「écoute」が、新井英一の耳には、「いくつ」に聞こえたそうです、そこからスッと言葉が浮かんでいったという、新井英一訳詞のL’eau à la bouche、原題は「唇によだれ」を、『愛がこぼれる』、続いて、ジャック・ブレルのカバーで、『泣く友を見る』をお聴き下さい。

今週の曲紹介
『ラ・ノワイエ』
『愛がこぼれる』
『泣く友を見る』 (いずれもアルバム「オオカミ狩り」より)

放送時間17分

『新井英一の世界vol.309』の再放送は、4月20日(月)午後3時〜、4月21日(火)夕方6時30分〜です。