2014年8月9日放送 『新井英一の世界vol.273』

・・・あれ?もう終わり?と思われたんじゃないでしょうか(笑)、いえいえ、始まったばかりです。改めまして、みなさん、こんにちは。「FM797ライブ!新井英一の世界」、私マサミがお届け致します。冒頭から、ジャック・ブレルの『アムステルダム』をお送りしました。新井英一・関西ライブ3日目、本日は元「バナナホール」、現在は「umeda AKASO」からのご報告です。暑さにはめっぽう強い私ですが、この日の会場は異様な熱気で、もっとクーラー効かせて!、何度悲鳴をあげたことでしょう。このライブは、1部はカバーで新井英一が好きな曲を、2部では自身のオリジナルを、という構成でした。本日は1部のステージから、3曲のピックアップです。

皆様は、セルジュ・ゲンスブールという人をご存知ですか? 亡くなって久しいですが、今なお支持されるフレンチポップス界の巨匠です。あ、こんな言い方、ゲンスブールに軽蔑されそうですね(笑)。いっとき私もゲンスブールに夢中な時期がありましたので、彼のこと、まったく知らないわけではありません。ロリータ趣味と揶揄されるほど恋も規制はなく、映画を撮れば物議を醸し出しと、常に話題の絶えない人でした。本業の歌でもデビューから大ヒットの連続です。ゲンスブールの作品の大半は、短く軽快、内容も大した意味がないように思うのですが、実は逆なんです。簡素な歌詞の裏には深い意味が隠されており、放り出すように粗雑に扱う歌には、韻を踏んだ美しい響きがあちこちに散りばめられています。
 老いて益々、世間を呆れさせる彼の行為と、薄く鋭い刃のような歌、このギャップが私にはとても痛く苦しく、ついに聴けなくなってしまいました。好きなのに聴けない悲しさ、一生ムリかな、そう思っていた処に思わぬ助け舟を出してくれたのが、新井英一です。私にとっては、ゲンスブールを唄う彼の存在は単なるカバーではありません。彼の身体を介したゲンスブールは、痛みも苦しみも取り払われ、純粋なゲンスブールとなって安心して聴ける、そう、新井英一はフィルターなんです。お聴きいただきましょうね。

1曲目の原題は、「L'eau a la bouche」意味は「唇によだれ」、それを少し変えて、詞も新井英一が書きました。内容は原曲通りではありません、ゲンスブールならまず言わない言葉も入ってます。でも、この唄に溢れる色こそ、私が思ってきたゲンスブールなんです。新井英一がフィルターだと言う理由はここにあります。2曲目のタイトルの意味は、溺れ死んだ女。では参ります。唄・新井英一。『愛がこぼれる』『ラ・ノワイエ』。

今週の曲紹介
アムステルダム
「愛がこぼれる」
「ラ・ノワイエ」(すべてアルバム「オオカミ狩り」より)

放送時間17分


この回の再放送は終了しています。