ソウル・・・新井英一・『KOREAN FESTIVAL』 (後編)

 今夜の会場は、博物館内の『シアター龍(ロン)』。広過ぎてなかなか到着しないーッ!

ゼイゼイ息を切らしてやっと到着したロビー。私の友達の親友インさん、1時間も待たされたというのに、優しく笑って私を迎えてくれました。長身で整った顔立ち、ワオ!素敵な人♪ 自己紹介すること、どっちも忘れ、気が付いたら普通に喋ってました。こちらはフェスティバルのパンフレット。タイトルは『2013年コレアンフェスティバル』、赤線を引いてあるのは、テーマで『アリランで再会した韓民族』だそう。

友人が入手してくれた私のチケットです。ちゃんと封筒に入れてありました。私の宝物です♪

9番目が新井英一達の出番です。

パンフレットに載っている新井英一のプロフィルです。赤線は多分、ギタリストの「たかはしのぞむ」と書いてあるんだと思います。読めないけど、文字を数えてきっとそうだろうと(笑)。

私達の席は1階のちょうど真ん中辺り、うん、いい眺めネ。カメラがすぐ近くにありました。6時開演でしたが、やはり市内の混雑でまだお客さんはまばらです。少し遅れての開始となりました。やっと席に落ち着いたと思ったら、私達の前の席からニッコリ笑って手を振ってる子が。「Mちゃん、よかったぁ!ちゃんと無事に着いたんやね!」、東京からも一人ファンがやってきていたのです。初の海外、しかも一人旅。来ることは知っていましたが、肝心の連絡先を教え合うのを忘れ、5時に現地集合と言ったきりでした。不安だったんじゃないかなぁ…そうでもないかな?たくましい子だから(笑)

インさん、本職は画家ですが、公務員かつ某劇場のキュレーター、そして週に3回は大学で美術の教鞭もとっているとか。とにかくアートに関して造詣が深い方です。京都にも数年在学していたそうで、日本語が堪能。このフェスティバル、司会者が二人いらっしゃいまして、韓国語と英語でされましたが私にはどちらも…インさんが全部通訳してくれました。私は新井英一以外、観るもの、聴くもの、何もかもが初めてで、アリランをテーマに舞踊あり、モダンバレエあり、歌では歌謡曲っぽいものや中国の朝鮮民族の歌など、とにかく全部面白い。インさんにとってはどうなのかな?と思っていたら、「これ、思った以上に面白いです」と興味津々、やっぱり感覚は同じなんだと思いました。

この時点ではパンフレットはまだ貰ってなく、何人の出演者がいるのか、新井英一はいつが出番なのかを知らなかった私達。フェスティバルが進むに連れ、私、段々心配になってきました。私は新井英一の唄を知っています、だからこそですが、主催側、このフェスティバルを一体どう展開するつもりなのかなぁ。いろんな出演者がそれぞれ魅力的な演目をお披露目してるのですが、新井英一が唄うことによって、その流れというかまとまりが一変してしまうんじゃないの?その後の演目、どうつなげるの?余計なお世話でしょうが、ホントに大丈夫なの?って(笑)。インさんも同じことを考えてたようで、二人同時に「新井さん、トリやね」。まさかまさかですよ、単なる出演者の一人だと思い込んでました。でもトリだったら納得がいくわ。

少し背の高い椅子が舞台に運ばれてきて「あ、望さんのだ!」。うわぁ、間違いない、本物の新井英一だ!!!…と、ここまではちょっと浮かれておりましたが、唄が始まると、私の頭の中、四方八方分裂してしまい、自分が何を感じてるのかよく分からなくなりました。ただ大きな声で叫んでいたのは「違うッ!!!全然違うッ!」。ついさっきまで新井英一の唄は他とは違うってことにあれだけ私自身が思っていたというのに、今度はそれに驚いているんです。こんなに沢山の出演者、しかもうまい人ばかり…その中の一人であるはずの新井英一なのですが、違うんです、個性とかそんなレベルの話じゃない、もっともっと別のもの。…私、こんな特別のものをごくごく当たり前のように聴いていたんだ…。なんてラッキーなんだと思ったし、新井英一の唄しか聴く気にならなくなったのは私のせいじゃなかったんだとも思ったし(笑)。想像では私、もっと誇らし気に聴くと思っていました。でも実際はそうじゃなかった。私が誇らしく思うことなんかない、誇りを持つのは新井英一なんだって思いました。だから、私は無言だったのです。彼が唄い終わった後、客席からは歓声が上がり、インさんは「やっぱり新井さんは素晴らしい!全然違う、彼はプロだ、本物のプロだ!」「他の人もプロやろ?」「そうですが、実力が全然違う、彼は特別中の特別です!」。うわぉ〜、急に誇らしくなってきた(笑)。

「気持ちいいーッ!」。劇場を出るとほてった身体に冷たい夜風が当たり、最高の気分です。「さ、ご飯食べに行こう!」「何が食べたいですか?」「そりゃあ、焼き肉でしょ〜、この夜のためにずっとお肉断ってたんやから思いっ切り食べる!」「韓国では焼き肉は晩ご飯に食べます」…何言ってるんだろ、この人。アハ、そういうこと。今は10時前。つまり夕食の時間はとっくに過ぎた、だからもう焼き肉は終わっているかもしれない。「でもまだ少しは残ってるかもしれません、とりあえず行きましょう」「ねぇ私、ワイン飲みたい、ワインと焼き肉のあるお店に連れてってよ」「ワインかぁ、難しいですねぇ」「ちょっとシャレた店ならあるでしょ、あるって!」。地下鉄乗ること数十分。ここは再び仁寺洞です。インさん行きつけの焼き肉店はもう閉まっており、焼き肉屋だけでなく、ほとんどのお店も店じまいをしておりました。「食べられたら何でもいいし、呑めたら何でもいい」「じゃあ、マッコリ呑みましょう」「え〜、怖いよぉ、でも少しだけ試してみる」。この『長寿』という名前のマッコリ、どこにでもあります。めちゃめちゃ安い。おそるおそる飲んでみたらジュースみたい!「よかった、ワインないおかげでこれに出合えた!」、さぁ呑むぞ食べるぞ! 

プルコギと、私がリクエストしたイカの炒め物。ホントは生のイカの足が食べたかったのですが、このお店にはなかったのです。辛いけど美味しい。昨夜行った明洞の屋台ですごく食べたかったタコの刺身…一人で食べるには多過ぎて泣く泣くあきらめました。ソウルではどうもタコやイカに目が行きます。他にはチヂミ、チャプチェ(「チャプ」までは普通で「チェー」は強めに発音するのだと知りました)、あと何食べたか忘れましたが、どれも美味しかったです。私は呑んでばかりいましたが(笑)。

みんなでHさん達をイビス・アンバサダー・ホテルまで送り、ちょっと離れた場所にホテルを取っているMちゃんをインさんと二人でタクシーで送り届けました。その後?もちろん、インさんと呑み直しです、夜はまだまだこれからネ。というわけで、インさんのお友達ウォンさんが経営しているカフェにやって来ました。お店は閉店直後。これから3人で街に繰り出すのです。ウォンさんも本職は絵描き。インさんが勤務するアートシアターで近々個展をやるそうです。その後、シンガポールでも個展が決まったそうで今大忙しなんですって。忙しい時はカフェは従業員に任せ、隣のビルにあるアトリエで創作活動をするのだとか。熱いコーヒーをごちそうになりました、味が深くてとっても美味しい!

ウォンさんのカフェは大学街にあり、学生にとても人気があるそうです。白とオレンジのインテリアが清潔感に溢れ、かつオシャレ。ウォンさん、絵の才能だけじゃなく商才もあるようで、最初は小さなお店だったのを、周りを買って大きくしたそうです、確かに広〜い。これはウォンさんの愛犬ラテ。すごく大きいですがご主人に似て、とてもおとなしい。間違いなくラテも人気者ですね。

ラテに続いて店の人気者がこの子ブタ。名前きくの忘れました。まだ赤ちゃんです、ブヒブヒ言ってた。

いやァ〜、楽しかったなんのって!3人で何かに笑うたんびに「コンペー!(乾杯!)」でまた笑って、延々朝の4時まで呑んでおりました。この夜、一体何本のマッコリ空けたんだろ、インさん、ベロベロ(笑)。「まさみさん、強いッすねー」、別に強くなんかないけど、先に酔われちゃ酔えないでしょ(笑)。明日も仕事があるウォンさんとはここで別れて、「ほら、インさん、帰るよ」、彼のホテルと私のホテル、同じ方向だったので一緒のタクシーに乗りました。降りたのは鐘路3街。うわっ、やっぱりソウルの人ってタフだわ!道路にズラ〜と屋台が出て、まだ宵の口とばかりに皆呑んでます。「一杯呑んでく?」「何言うてんの、あなた、もう無理でしょーが」「アハハ!」。…ちゃんと私をホテルまで送り届けてくれました。「どうも有難うね、今日のこと、帰ったら真っ先にKさんに報告しとくね」「今度は3人で会えたらいいね、時々電話で喋ろうね」「うん!」、いくら友達の親友とは言え、今日初めて会った人とは思えないほど気が合いました。ライブと言い、インさんと言い、最高の夜でしたね。みんなみんな、有難う!