2015年12月26日放送 『新井英一の世界vol.338』

 2015年も暮れにさしかかり、観光客で膨れた京都の街もようやく落ち着きを取り戻して参りました。クリスマスは、皆様、いかがでしたか?今年のブームは、「クリぼっち」と言って、一人で過ごすクリスマス。ご褒美として、ケーキや欲しかったものを自分にプレゼントするんだそうですね。なるほど、まずは、褒美に値するかどうかの自己評価とは、クリぼっちもなかなか厳しいですネ(笑)。まぁ、いろんな過ごし方があるにせよ、皆様、キゲン良くクリスマスを過ごされたことと思っております。

 さて12月18日、京都のカフェアンデパンダンで新井英一ライブが開催されました。今回のライブは特別で、『清河への道48番』の、限定ライブでした。在日として生まれた新井英一が、自分のルーツを確かめるべく、父親の故郷・清河(チョンハー)村を訪れる 『清河への道』 という彼の代表曲ですが、幼少期からやがては家庭を持つまでの、自身の半生を綴ったのが、『清河への道48番』で、1曲唄い終えるのに50分近くかかる曲なんです。この歌が世に出て20年目の今年は、全国あちこちで「48番」ライブが開催され、ラストがここ、京都でした。

 私が「48番」を聴いたのは、今回で5度目です。もちろん全部覚えています、歌は同じでも、生身の人間が唄うんです。同じものはありません、ということは重々承知の上で、今回の「48番」は、今までと違うと感じました。ただ、どこが違うのか、何が違うのかがわからない…モヤモヤしたまま、何度も唄を思い返しました。わかるまで、結局3日かかりました(笑)。唄の最後、清河の旅から戻った新井英一は、ひとつの、揺るぎない答えを出すのですが、それを聴きながら、私がしたことは、唄の流れに逆らって、最初からもう一度、歌の出だしに戻ったことでした。心から納得し、先の人生を一点の曇りなく歩むことのできる答え、その重みとは、どのぐらいのものなのか、具体的に感じたくなって、彼の幼少期から時間を再度振り返った、というわけです。

 今回は、今までとは違うと思った点は、とてもプライベートなこの唄に、そんなことができる「余白」が生まれていたことでした。見る、聴くだけでなく、自分の人生に、足を踏み入れ、動ける自由を他者に与える…、それは、新井英一が年を重ねた寛容さでもあるでしょうし、20年間ひとつの歌を繰り返し唄い続けてきた結果だと思います。積み重ねは、優しさを生むんですね。

 今年最後の『新井英一の世界』は、1曲に絞りました。長いようで短く、短いようで長い人生、どちらも同じ長さです。ふと思いました。人生って宝石みたい。たまには自分の歩んだ道を振り返って慈しんでやると、この先また輝き続けることでしょう。自分の人生を大事に出来るのは自身だけです。そんな風に生きたいと思います。1年のラストにこんな歌はいかがでしょうか。お聴き下さい、作詞・作曲・唄・新井英一。『60本の赤いバラ』。

今週の曲紹介
『60本の赤いバラ』 (アルバム「唄魂」より)


放送時間14分


2015年は、皆様にとって、どんな一年だったでしょうか。私は、大きな悲しみもあったけど、喜びにも恵まれた忘れがたい年でした。残りほんのわずか、1日1日を丁寧に過ごしましょう。今年も『新井英一の世界』にお付き合い下さいまして有難うございました。どうぞ、良いお年をお迎え下さい。


『新井英一の世界vol.338』の再放送は、12月28日(月)午後3時〜、12月29日(火)夕方6時15分〜です。年明けは1月2日夜10時15分の放送です。