2015年12月19日放送 『新井英一の世界vol.337』

 周知の通り、作家の野坂昭如さんがお亡くなりになりました。文筆にとどまらず、いろんな方面で活躍された多才な方でしたね。もういらっしゃらないのかと思ったら、胸の深い所で風が吹くような、そんな寂しさを感じるのですが、それも束の間。私の場合は、歌ですが、コマーシャルソングなど、残されたいくつかの作品が浮かんできて、懐かしさでいっぱいになります、そして気がつけば、自分自身の思い出に浸っていた…、野坂さんって、昭和の時代のあちこちにしっかりご自分を刻まれました。

 今からもう40年は確実に経っていますね、野坂さんの唄う「黒の舟唄」、文字通り一世風靡しましたねぇ。あの頃私は幼稚園児か、小学校上がったぐらいだったと思います、大人の雰囲気満々の唄が子供ながらに何ともいえずカッコよくて憧れて、四六時中口ずさんでいました。もちろん意味なんかわかっていませんが、いっぱし大人になったような気分でいたこと覚えています。

 こんな風に、私にとっての野坂さんは、歌手・野坂昭如が最初であり、次はポンと飛んで、ご記憶にありますでしょうか、政治討論番組の『朝まで生テレビ』。今は年1回ぐらいの放送になってしまいましたが、当時はしょっちゅうやっていましたよね。確かこれにも野坂さん、一時ご出演されていたと思います。この辺りからmなかなかエキセントリックな方という印象が強くなっていったと見受けますが、この方にはいかなる時でも決して曲げない・曲がらない、信念を感じました。主張が正しい正しくないはまた別の話で、信念があるかないかが、人間はとても大事に思います。

 私の周りでも珍しくないです、「争いたくないから、本心は言わない、逆らわない」という風潮…。カシコイなあ、一理あるなあと、失敗ばかりの私なんかは思うわけです。私もそう生きよう、あしたから利口になろう、毎晩のように考えます。でも、いつも同じ所で行き詰まってしまう。と言いますのは、処世も板につけば、いつしかそれが生き様になってるわけで、「それは心外、そんなの私じゃない!」、自分には所詮無理な生き方と、結論づけるんです。でも、ふと思いました。もしかしたら、楽な生き方なんてないんだからと自分を励ましているのは、みんな同じなのかもしれませんね。

 お喋りはこれぐらいにして、唄に参りますネ。クリスマスを目前にずいぶんかけ離れた曲を選んでいますが(笑)、どちらも私の大好きな歌です、お聴き下さい。唄・新井英一。『黒の舟唄』『人を恋うる歌』、2曲続けてどうぞ。

今週の曲紹介
『黒の舟唄』
『人を恋うる歌』 (いずれもアルバム「オールドファッション・ラヴソング」より)

放送時間14分

『新井英一の世界vol.337』の再放送は、12月21日(月)午後3時〜、12月22日(火)夕方6時15分〜です。