2015年2月14日放送 『新井英一の世界vol.300』

 しばらく穏やかだった天候が今週に入って再び猛威を奮い出しました。日本海沿いの各地域は、私、公私に渡って縁があり、友人知人が多いものですから、とても具体的な心配をしています。私がそう言うと、電話口の向こうから「大丈夫よ」と明るく元気な声が聞こえてきてホッとするのですが、ひとりひとりに確かめるわけにもいかず、早く春になって欲しいと願うばかりです。

 そしてもうひとつ、雪が降ると、田舎の海を思い出します。日本海に面した小さな町、季節問わず海を見て、相変わらずだなと思うのが子供の頃からの習慣です。一年を通してたいていが、海と空が灰色続きで一体なんです。抜けるような青い海なんて、感覚としては宝くじのようなもので、たとえ空は晴天でも、海は泣いていることの方が多いです。そして冬の日本海は、まるで初めからこの世に色彩など存在しないような、重苦しい無彩色に包まれるのです。

 ずいぶん前に一度だけ、電車に乗り新潟まで行ったことがありました。富山を過ぎてからは、海に沿って延々、やたらと長い時間に思えました。読書にも飽きて、窓の外をぼんやりと眺めていました。そこには私の目によく馴染んだ灰色の海と空が広がっており、初めての土地なのに、何かこう、忘れ去った遠い記憶を引きずっているような、妙な感覚に陥っていました。

 では音楽です。おそらく分厚い空が呼ぶのでしょう、この時期になると無性に聴きたくなる曲があります。本日はそれを2曲目に、まずは、鮮やかな色が目に残るこちらの曲からお聴きいただきましょう、唄・新井英一。『他郷暮らし』続いて『母卿思慕』。

今週の曲紹介
『他郷暮らし』(アルバム「生きる」より)
『母卿思慕』(アルバム「アルカンタラの月」より)

放送時間17分

 明日、新井英一のライブに行ってきます。今年初のライブです。場所は新宿から電車で15分の調布です。日帰りの旅だからどうか穏やかでいて下さいと、天に向かって祈っています。無事行けたらご報告しますね。ではまた来週、同じ時間に。マサミがお送り致しました!

 
『新井英一の世界vol.300』の再放送は、2月16日(月)午後3時〜、2月17日(火)夕方6時30分〜です。