2016年7月2日放送 『新井英一の世界vol.363』

  みなさん、こんにちは。「FM797ライブ!新井英一の世界」、私マサミがお届け致します。急な出張で番組に2週も穴を空けてしまいました。皆様にはご心配をおかけしたのではないかとお詫び申し上げます。全国的に雨に見舞われる日が長らく続いております。もう新しい月になったというのに、いつまで居座る気なのか…、にび色の空をうらめしく窓から見上げる毎日です。だから、たまの快晴が心底嬉しいですね。何はさておき、洗濯の二文字が頭を占めます(笑)。カラカラに乾いた洗濯物の、太陽の匂いが香しく、明日はまた灰色に戻るかと思うと、夏はまだ遠くに思えるものです。

 そんな日々の中、因島からジャムが届きました。大きなビンの、口までいっぱいに詰められた、友人手作りのマーマレードです。ネーブルに、見かけは文旦によく似た黄色くぼってりの安政柑、デコポンにきよみオレンジと、4種類から成る贅沢なマーマレードです。早速スプーンに山盛り掬って味見すると、砂糖たっぷりに煮詰められたそれは、柿にも似たどっしり濃厚な味わいで、優しい甘酸っぱさとほろ苦さが鼻に抜けていきます。思わずニンマリ。彼女らしい味だなぁと思ったら、とても恋しくなりました。

 尾道市因島。ご主人の定年をきっかけに、彼女がそこへ引っ越して行ったのは、ほんの2ヵ月前のことです。沢山の子供を育てたせいか、面倒見がよく、いつも笑顔。根からの正直者で、誰に対してもありのままで勝負する、肝っ玉お母さんです。料理上手でしかも豪快、彼女と知り合って、私は冷蔵庫を1台増やした、と申し上げれば、彼女の気前の良さがどの程度かご想像つくかと思います(笑)。そんな彼女が、私のそばからいなくなって丸2ヵ月、どうしてるんだろうとしょっちゅう考えるものの、声を聞くと余計寂しくなるのがいやで電話ひとつしませんでした。ハンドル握って島へ行き、驚く彼女を想像することで自分を満足させていたんです。

 音沙汰なしの私をどう思ってるのかな、時間の経過と共に強くそう思うようになった頃、「ジャム出来たよ!」、いつもと変わらない元気な電話がかかってきたのは、今週月曜日のことでした。思わず「帰ってきて!」とすがりついてしまいました。

 こんがり焼いたトーストにバターを少し、そして飴色のマーマレードをた〜っぷり、これが毎朝の私の楽しみです。ひと口かじるたび、まだ見ぬ因島の風景が、青い海と黄色い果実に重なって目に浮かんできます。彼女とはまもなく会えることになり、自然と笑みがこぼれます。

 さて、突然ですが、当番組『新井英一の世界』は、しばらくお休みに入ります。仕事が忙しくなり、私の意識モードが四六時中、そっちに傾いてしまっている今、仕事に全力を注ぐことに決めました。休み期間は、半年か1年か、もしかして新しいアルバムが出たら、すぐに戻るかもしれないし、特に決めていません、自分に余裕が出来た時に戻ってきます。その時は、もっと気楽でもっと楽しい『新井英一の世界』をと、漠然ですが思っていますので、今後ともよろしくお願い致しますネ。

 では、歌に参ります。本日は、大好きなシャンソンを1曲選びました。エンディングなしでお届け致します。ギター・高橋望、唄・新井英一。曲は『私の孤独』。またいつかお会いしましょう、マサミがお送り致しました。

今週の曲紹介
『私の孤独』 (アルバム「オオカミ狩り」より)

放送時間12分

雨の中の店番

 数日前に届いた知人からのメールに、「次の日曜、『マルシェ』に出店するのでいらして下さい」とありました。場所は京大の向かいにある「アンスティチュ・フランセ」〜古かった建物を改築したと同時に名前もオシャレに改名したそうですが、我々古い人間には昔ながらの呼び方「日仏」しか通用しません〜、で、この日仏、前庭を使っていろいろ催しを定期的にやっているのです。そのひとつが『マルシェ』。知人が何売ってる人か全然知らないけど、なんだか楽しそうじゃないですか、「行きます!」とだけ書いて返信しました。

 で、昨日がその日曜。朝から雨…。雨になるとは聞いていましたが、こんなによく降るとは。出かけたくないよ〜。あんなズバリの返信しなきゃよかった。せめて「行きます!」の前に「晴れたら」と付けるべきだったなぁ、うん、次回からは絶対そうしよう。そんなこんなでだらだらぐずぐずして、時計が1時を回ったところで、ようやく重い腰を上げました。

 30代の頃、5,6年通っていた懐かしい建物です。ホントにフランス語が好きで楽しくて、ずいぶん勉強しました。でもね、言葉は、使わなきゃ忘れるものです、激しく悲しいほどに。

 早く帰りたかったものだから、真っ先に知人の店に行って挨拶し、「じゃあ帰ります」と言いかけたところで、「せっかくだからゆっくり見て回って下さい」と微笑まれて「そうですね」…。すごくいい匂いを醸し出してるソーセージ&ドイツビール屋さん、あ〜飲みたい!ワイン屋さん、買って帰ろうかしらのキッシュ屋さんetc…。

 そうそう、知人はフランス雑貨を扱っているのだそうです。雑貨と言ってもいろんな種類があるわけで、「具体的に?」と尋ねても、返ってくる答えが毎回よくわからない。それぐらい種類が多いのだろう、ということで私も追求しません。

 
 知人の隣のお店。試食販売でよく売れていました。ジャム屋さんだと思っていたら麹屋さんでした。

 ひと通り回ったし、今度こそ帰ろうと知人に挨拶をしに戻ったところで事態は急展開。彼、何を言ってるのかハッキリしないし、動作もぎこちない、というか、全身震えているのです。かぼそい声で「寒い…」、差し出した両手を触ってみると異様な冷たさ。朝からの雨で低体温に陥ってるようです。「上着は?」「ありません。こんなに降るとは思わなかった」って、明け方からザーザー降ってたでしょうが!このまま放っておくと病気になること間違いない…、仕方ないか…、「私、店番しててあげるから、家帰って着替えてくれば?」「いいんですか!?」「その代りすぐ戻ってきてよね」…というわけで、ただいま店番中。まったく商品知識のないまま売り場に立ってます、めちゃ不安。   

 今日買ったもの。無農薬野菜。3本100円のキュウリ。人参。丸っこいのはズッキーニです。そういえば最近の私、あちこち行っては野菜ばっかり買ってます。知人の店で買った、ナイフ型の皮むき器と小型ナイフ。普段使ってるペティナイフより、もっと小さいのが欲しくて探していました。千円程度なのにすごくよく切れるスグレモノ、オススメです。

 いったん上がっていた雨ですが、店番中にまた降ってきました。Tシャツ1枚じゃ寒いのなんのって。今度は私が低体温になりそうだと思ったところで、「すみませんでした〜」。黒いジャケット姿の知人が初めてたのもしく見えました。他のお店の方々も背中ずぶ濡れ、さぞやお風呂が恋しい1日だったことでしょう。

2016年6月11日放送 『新井英一の世界vol.362』


  梅雨入りしたようですね、すっきりしないお天気が続いています。梅雨といえば、飽きもせず・毎日しとしと降り続く、鬱陶しさの代表でしたが、もう「今は昔」になりました。今じゃ降り方がすっかり変わってしまって天の恵みどころではありません。記憶の中の梅雨は、年々、雨音も情緒を増し、雨粒はセピアの中で輝きを増していきます。

 さて、今週頭、東山三条の、とある画廊が長年の営業にいったん幕を下ろしました。閉店ではありません。より大きくなって移転する、準備のための休業です。先週末、その「さよならパーティ」が開かれ、私も出席致しました。普段の、芸術家を囲んでのオープニングパーティと異なる点は、参加者の年齢層がかなり高かったところでしょうか(笑)。古くは60年代からの付き合いという店主の仲間が、遠くは愛知、東京からも駆けつけてお祝いです。年季の入った人間たちの面白さに感心したり、ちょっとした言葉にハッとしたりと、大人の魅力を存分に味わえたひと時でした。

 この画廊の店主には、去年8月、縁あってある旅行でご一緒して以来、何かと気にかけていただくようになりました。どんな方かと言いますと、珍しいかな、鋭い洞察力に温度がある人です。みんな安心できるんでしょうネ、この方の周りにはいつも沢山の人がいます。慕って若い芸術家が集まってくる、地域の人達が支え応援する、画廊に満ちる空気が温かくて柔らかくて、いつの間にかここは、私にとって聖域になっていました。

 来月オープンする新しいギャラリーは、スタッフも増やして、より強力体制で臨まれるようです。元は研修生でやってきて、期間が終わっても、「そのまま居続けるもんだから社員にせざるを得なかった」と笑う、今は店主の右腕を筆頭に、個性豊かな女性ばかりのスタッフです。画廊の仕事って、アートが好きぐらいじゃ到底つとまらないでしょう、自分を奉仕するぐらいの覚悟でないと、傍で見てても厳しいものです。それでもなお、この仕事が好きと熱意を持てるよう、このベテラン店主がスタッフをどのように教育していくのか、なんてラッキーな子達だろうと、羨ましささえ覚えてくるほどです。梅雨が明け、高い青空を臨む頃には、既にギャラリーはオープンしているでしょう。花束持って駆けつけよう、今はそれを心待ちにしている私です。

では、音楽です。今日は皆様へ、人生の応援歌を私なりに選曲してみました。年齢なんて関係ありません、人生いつでもスタート地点、そんな気持ちで挑みたいものです。お聴き下さい。唄・新井英一。『果てなき航路』。次週もまたお会いしましょう。マサミがお送り致しました。

今週の曲紹介
『ジプシー』
『果てなき航路』 (いずれもアルバム「果てなき航路」より)

放送時間14分

『新井英一の世界vol.362』の再放送は、6月13日(月)午後3時〜、6月14日(火)夕方6時15分〜です。

2016年6月4日放送 『新井英一の世界vol.361』

 
 ここ半月ほど無我夢中で仕事をしていました。半月だけ夢中って、いつもはどうなんだと言われそうですね(笑)。確かにこの半月は、まだ自分の中にこんなにパワーがあったんだと驚くほど、まさに熱の塊りでした。よって、私はどこにも出かける余裕がなく、皆様に提供できる楽しいお話がないことを詫びつつ、今日は私の近況をお話ししようと思います。

 去年8月、私は仕事のパートナーを亡くしました。家族であり、ひょんなきっかけで一緒に仕事をして15年余り、激しくぶつかることも多々ありましたが、とても息の合ったコンビでした。独りになった私は、同時に目標もなくなってやめてしまおうかと考えましたが、そこまでしなくても、自分を食べさせられる程度、自由にほどほどにやろうと結論付けました。私を駆り立てる者のいない毎日は、決して居心地悪いものではありませんでした。会社は実質開店休業状態、それでも焦るどころか、ヒマを楽しんでおりました。ずっと闘ってきたような15年でしたから、気楽になれることが嬉しかったんです。ただ、そんな一方で、まるで自分の右手が肥大していくかのように、気になっていきました。最初は気のせいと無視していましたが、どんどん気になり出し、最後は四六時中、脳裏から離れなくなりました。

 意識もほとんどなく、握った手だけで繋がっていたあの夜、時折り、かすかに握り返してくる手が、「あとは頼む」と言っているようで、時間が経つほど、その声なき声は大きく響いてくるようになりました。このままだと、私は一生自分の手から逃げ続けなければならない…、ようやく半年目で、私は新しいパートナーを見つけてやり直そうと決心しました。

 募集を出した翌日に現れた女性は、私より17歳下です。そう言えば、新井英一と、パートナーのギタリスト高橋望も17歳差、音楽の話題以外、話が合わないと笑っていましたが、なるほどこんな感覚かと、今ならわからないでもありません(笑)。新しい子は、気が強く、あっけらかんとしていて、何でもすぐに夢中になる性格です。まだ始まったばかりで先行き不安だらけの私ですが、彼女のカラカラとした笑い声に、なんとかなるか、いや、なんとかするんだ!と自分にハッパをかける毎日を送っています。

 では音楽に参りましょう。今日は先月行った岐阜の瑞浪芸術館のライブからピックアップです。時間の都合で私はここでお別れしますが、皆様は最後まで番組をお楽しみ下さい。それでは、唄・新井英一。『生きてりゃいいさ』。続いて、『君のままで』の2曲をどうぞ。

今週の曲紹介
『生きてりゃいいさ』 (アルバム「ライブイズベストvol.2」より)
『君のままで』 (アルバム「エイジアン・パラム」より)

放送時間17分

『新井英一の世界vol.362』の再放送は、6月6日(終了)、6月7日(火)夕方6時15分〜です。

2016年5月28日放送 『新井英一の世界vol.360』

 5月最後の放送です。毎日暑いですねえ〜、外に出るとムッとするような熱を感じます。今週・友人のひとりがジュネーブに出発しました。スイスと言えばハイジの山を連想し、涼しいだろうなぁなんて思っていますが、実際はどうなんでしょうね(笑)。旅程は1週間で、スペインまで回るそうです。仕事とは言え、うらやましい…、私もどこか出かけたいと考えたところで、全然現実味がありません。当分ムリムリ・・・せめて・友人の帰りを待って、土産話を肴に、スペインワインを呑み交わそう、今はそれを楽しみにしています。

 さて、スペインと言えば、新井英一も今頃スペインのどこかを歩いているはずです。先週申しましたように、彼は1ヶ月間の巡礼の旅に出かけました、66歳の記念だそうです。ホントは去年の、65歳に行きたかったそうですが、行けなかったので今年、ぞろ目の記念にと笑っていました(笑)。この巡礼の旅は、新井英一ひとりではなく、夫婦で歩くそうです。何年か前この旅の話をライブでしていた時、「もし行きたいと言ったら、一緒に連れて行く」と言っていました。徒歩800kmの道のりは自分一人でも大変でしょうに二人だなんて。夫婦ってそこまでセットなんだろうか…?、結婚したことのない私には、そこらへんの感覚がわかりません。しかし、先日、新井英一がふと漏らした言葉にひじょうに納得致しました。「これから先、夫婦の会話に、あの時は、と、共通の話題が沢山あるといいと思って」。確かに、苦労が多ければ、あとで笑うことも多そうな…、実り豊かな素敵な旅になることを祈っています。

 では、音楽に参りましょう。今週も引き続き、京都・アンデパンダンライブからの選曲です。ライブで全国を回る新井英一にとって、旅は日常ですが、人生のカギとなる旅もいくつかしています。その内のひとつが二十歳過ぎに行ったアメリカです。目的はとにかく行くこと、後はなるようになる、無謀さも若さの特権とばかり、存在そのものが輝いています。今まで普通に聴いていた曲ですが、今回のライブで、彼の人生の時計を巻き戻すような感覚で聴き、唄が、当時の情熱が、より光って聴こえました。皆様の人生にも思い当たること多しと思います、お聴き下さい。唄・新井英一。『ぶらじる丸最終航路』続いて、『NewYorkへの旅』。

今週の曲紹介
『ぶらじる丸最終航路』 (「アルカンタラの月」より)
『NewYorkへの旅』 (「NewYorkへの旅」より)

放送時間17分

『新井英一の世界vol.360』の再放送は、5月30日(月)午後3時〜、5月31日(火)夕方6時15分〜です。

2016年5月21日放送 『新井英一の世界vol.359』

 
 新井英一・京都カフェアンデパンダンライブから既に1週間が経ってしまいました。多くの方にご来場いただき、大変嬉しく存じております。いつも思うのですが、好きなものをみんなと共有する時間ってホントにいいですね。どんなに素晴らしいものでも、自分一人だと、花に例えるならつぼみのようなもので、それ以上の成長はありません。でも誰かと分かち合うと、そこから会話が生まれ、沢山の花が開きます。一人で噛みしめる良さも分かりますが、心底好きなものだからこそ、私はみんなと共有する方により多くの喜びを感じます。

 さて、新井英一は、今、スペインの突き抜けるような青い空の下、一体どの辺りを歩いているのでしょうか。アンデパンダンライブを終えるとすぐに、彼は長い巡礼の旅に出発致しました。ピレネー山脈の麓、フランスのサンジャン・ピエ・ド・ポールから、目指すはキリスト教三大聖地のひとつである、サンチアゴ・デ・コンポステーラまで、計800キロの道のりを、1日25キロずつ、ひと月かけて歩くのだそうです。800キロと聞いてもピンと来ず、調べてみましたら、京都からだと福島辺り、東京〜広島間がだいたいそれに相当するようですネ。京都市を東西に、端から端が29キロだそうですから、「なるほど、京都市を毎日横切るようなものか・・・」、距離やイメージを自分なりにつかみたくて、身近な感覚に置き換えてみましたが、例えが悪かったようで、大変さよりメンドクサさが勝ってしまいました(笑)。

 巡礼の旅と聞くと、単純な私に思い浮かぶのは、ぼろぼろ泣きながら何度も観た映画『砂の器』しかありませんから、新井英一は、なんという辛く悲しい旅を決心したんだろうなんて思い込んでいました。ついでにこれもネットで見てみますと、映画とは真逆、とても楽しそうな雰囲気でビックリです。世界中から数万人規模で集まるその巡礼の道は、人種のるつぼで、いろんな国の「こんにちは」がさぞや飛び交っていることでしょう。また、手段にルールはなく、徒歩はもちろん、自転車、バイク、はたまた馬でもいいのだそうです。若い人が圧倒的で、新井英一と同じ60代は、参加人口の1割ほどらしいですが、彼曰く、「確かに不安はあるけど、人が出来るなら俺にだって出来ると思ってる」。ハイ、私もそう思います!地道に一歩一歩進む旅はしんどいことの方が多いでしょうが、1日の終わりは、美味しいワインと料理でしめくくり、あとはぐっすり眠る…、人間これ以上に必要なものなんてあるかしら、ああ、私も行ってみたいと、今は憧れを抱いております。

 では音楽に参りましょう。本日はアンデパンダンライブから2曲、私の大好きな唄をピックアップ致しました。ライブに行かれた方はしばしあの夜に戻っていただければと思います。それでは、唄・新井英一。『5月のバラ』、続いて、『港で待つ女』をどうぞ。

今週の曲紹介
『5月のバラ』
『港で待つ女』 (いずれもアルバムなし)

放送時間17分

『新井英一の世界vol.359』の再放送は、5月23日(月)午後3時〜、5月24日(火)夕方6時15分〜です。




 

2016年5月14日放送 『新井英一の世界vol.358』・・・野辺山ライブより

 ここんとこ、ほぼ毎週ライブ続きで、私は一人、最高に盛り上がっております。多少寝不足だろうがなんのその、毎日が楽しくて仕方ありません。

 GW最後の週末を、私は野辺山高原で過ごして参りました。道中さぞや混むだろうと覚悟して出ましたが、拍子抜けするほどガラガラで、みんなどうしたんだろうと心配になったほどです。出発した朝は肌寒く、お天気も前夜の雨がまだ残っていましたが、徐々に太陽はその威力を発揮し、なんてステキ!、車が信州に近づくにつれ、周囲の緑をキラキラ輝かせ始めました。とは言え、標高1500m近い野辺山ですと、太陽も照りつけ感がハンパなく、勝手なもので、どっか行って欲しいと願い(笑)、夜は夜で、星の輝きがまるで宝石みたいで、空が近いことを仲間とワイワイ喜び合いました。それにしても、この地は見る物全てが珍しいです。関西のものとは・明らかに異なる山の形、周りの動植物…、家の形状さえ、我々とは感覚が違いますから興味津々、自然がもたらす影響って計り知れないんだとつくづく思いました。

 そして、もうひとつ感激したのが、この夜、ライブで唄われた『北の大地』です。皆様には先ほどお聴きいただきました。大好きな歌で繰り返し聴いてきましたが、私、生で聴いたのはこの時が初めてだったんです。初めての生唄は、今まで聴いてきて、すっかり身体になじんだ映像をいとも簡単に塗り替えてしまいました。皆様は、先ほど唄を聴きながら、どんなイメージを描かれましたか?私は、唄の中、いつも空中から大地を見降ろしています。そこに広がるのは、自然の大パノラマ…。まるで壮大なドキュメンタリーフィルムを観ているようでした。しかし、生で聴いた唄の映像はまったく違いました。

 まず私は、地面にしっかり足をつけて立っていました。目の前には、今にも飛び立とうとする鳥、足元を泳ぐ魚、餌を求めて移動する動物の群れ…、それらを眺めているうち、すべての生き物はこの大地から生まれたということに気がついたんです。地の底から湧き上がるような唄声が「命をたくわえる力」を私に教えた。こういう時、新井英一という歌手に出会えて、本当に良かったと思います。

では、2曲目に参りますネ。こちらも野辺山ライブで唄われました私の大好きな曲です。本日は時間の限り、唄をお聴きいただきます、それでは、ギター・高橋望、唄・新井英一。『生きている内に生かされている内に』。次週もまたお会いしましょう、マサミがお送り致しました。


今週の曲紹介
『北の大地』 (アルバム「アルカンタラの月」より)
『生きている内に生かされている内に』 (アルバム「ライブイズベストvol.2」より)


ライブ会場のペンションにたどり着く一本道で出会った仔馬。


『新井英一の世界vol.358』の再放送は、5月16日(月)午後3時〜、5月17日(火)夕方6時15分〜です。